体験された
みなさまの声

3級修了生

永田 裕之さん


現在、京都で建築の仕事をしながら臨床美術士として活動している永田さん。
4級取得後、現場経験を重ねる中でスキルアップの必要性を感じ、3級を取得しようと思われたそう。

―臨床美術を知ったきっかけは?
 建築の勉強をし直したいと思って京都に来た時に、大学の図書館で偶然、「京都<臨床美術>をすすめる会」※の活動を紹介する新聞記事が目に留まったんです。その数年前から、認知症と診断されていた父が事故で寝たきりの状態になっていて、「父がまだ元気だったらこういうこともしてあげられたのかな」と思って・・・。まずは体験会に参加して「りんごの量感画」をやったらすごく面白かったんです。それから実家に帰る機会を利用して、東京校(お茶の水)で5級から3級まで受講しました。
※現在は「京都<臨床美術>をすすめるネットワーク」

―4級を取得してから「京都<臨床美術>をすすめる会」※に参加して現場経験を積まれたそうですね。
 幸いだったのが「会」に所属したことです。現場経験を積むことができたのがすごく大きかったですね。臨床美術の生の現場で勉強させていただく中で、上の級の先輩方の対応や提案の仕方がとても参考になりました。自分が声をかけても手を動かさなかった参加者さんが、先輩方の声がけで手が進んだり表情が明るくなったりする。それを目の当たりにして「何か違うものがあるんだな」と実感しました。4級を取得して2年ほどたった頃、自分のスキルをもう一段階あげるためにも3級を受講しようと思いました。

―3級を受講してみていかがでしたか?
 現場実習に関しては、講師の先生方の視点からアドバイスをいただけたのが大きかったですね。それまでも臨床美術士同士では現場の振り返りや意見交換などをしていましたが、先生方の視点はまた違うので。ダメなところはきちんと指摘していただけたのもありがたかったです。また、クラスメイトのセッションを見られたのも良かったですね。色々な対応の仕方を学べたのも勉強になりました。

―現場実習のほかに、自分でアートプログラムを作るという課題もあります。
 それも3級で大きな要素ですね。一つのアートプログラムを仕上げるのに4、5回は直したかな。先生にアドバイスをもらって直して、というのを何度も繰り返してやっと完成させました。
 そうした経験を通してアートプログラムに込められている「ねらい」を読み解けるようになりましたし、自分でセッションをする時も、意識して参加者への投げかけや提案をすることができるようになりました。現場では毎回うまくいくとは限らないんですけど(笑)。
 あとは画材に対しても意識が変わりましたね。指定されている色や大きさ、組み合わせなどの意味を考えるようになり、よりプログラムに対する理解が深まりました。

 

※永田さんが3級受講時に制作したアートプログラム
上:「流木のオブジェ」(試作)/中:「落ち葉のコラグラフ」(版)/下:「落ち葉のコラグラフ」(作品)

 4級から3級へのステップアップの幅ってすごく大きいんですよ。5級から4級とは明らかに違う。臨床美術を実施する側として、より意識や感覚を高めたいということであれば是非3級を受けてみるのをお勧めします。

―現在はどんな活動をしていますか?
 「京都<臨床美術>をすすめるネットワーク」で実施している、京都府立医科大学での認知症の方とその家族を対象にした講座のスタッフや、ネットワークの代表でもあるフルイミエコさんの個人アトリエのクラス講師を担当しています。また、2022年からは「一般社団法人 Art Along」の立ち上げメンバーにも加わらせていただき、デイサービスでの出張講座を担当しています。
 対象は30代の社会人から高齢者、認知症の方、障がいを持っていらっしゃる方など、大人がメインです。個人的に、父にできなかった分を他の方にさせてもらっているという思いがあって…。お子さんの現場もあるのですが、やっぱり高齢者の方とセッションするのが楽しくて、そちらを中心に活動しています。

―臨床美術士のやりがいを感じるのはどんな時ですか?
 いっぱいありますね(笑)。一つは自分が関わらせていただいたことで、参加者さんの手が動いて、作品が出来上がった時にすごく満足そうに笑ってくれた時。そのきっかけを投げかけることができたと思うと嬉しいですね。
 あとはこちらの想定を超えた表現が参加者さんから出てきた時。事前に作品の試作を重ねて「だいたいこんな感じになりそうかな…」と想定をして現場に臨むのですが、それがひょいと覆されるような表現や作品が参加者さんの中から出てきた時はすごく嬉しいし、驚きがあります。セッションの醍醐味というか、ただ単にプログラムをこなすだけじゃない面白さ、それを参加者さんから教えてもらっている、そんなことを日々感じています。

―資格取得講座の受講を検討している方へのメッセージ
 一度、臨床美術を体験していただくと、いわゆる美術の授業とはまったく違うアートの面白さを感じていただけると思います。僕自身も受験などで画材には触れていましたが、「絵の具の色を感じる」とか「画材そのものを楽しむ」という感覚が全くなかったのでこういう楽しみ方があるんだっていうのは驚きでした。
 「美術を学んできたけど、それと何が違うの?」って思っていらっしゃる方、受講する前の僕もそうだったかな・・・、「ただ絵の描き方(メソッド)に独特なものがあるくらいかな」と思っていたのですが、そうじゃないことが「りんごの量感画」を体験して分かりました。皆さんにもぜひ体験してみていただければと思います。